2014.6.26

今日から休暇。

朝日を受ける大喰岳

よく晴れた朝、下山日和!
朝5:30に山荘を発って、
飛騨沢を下りる。

稜線から300mくらいは夏道が出ていたが、
まだまだ急斜面の雪渓が残っていて歩きづらい。

夏靴を履いて、滑落停止用にピッケルを持って、
シリセードやグリセードで一気に下ろうと思っていたけれど、
スプーンカットされて氷板・クラスト・ザラメが入り乱れた斜面に悪戦苦闘。
程よいザラメの場所でシリセードし出せば、
氷板ゾーンに尻をめった打ちにされ、
グリセードし出せば急に加速したり減速したりで転がりそうになる。


飛騨沢の雪渓、上部


飛騨沢の雪渓、下部


雪渓の末端

転びはしなかったけれど、
踏ん張り続けて膝がガクガク。

山荘への戻りは軽アイゼンでと考えていたけれど、
軽アイゼンだとまだ難儀しそうだ。
ピッケルはもちろん必携。


夏道ゾーンに入ると春が広がっていた。

四方八方からウグイスのさえずりが聞こえ、
生まれたての緑が目にやさしく飛び込んでくる。

数歩進むごとに緑が逞しくなっていき、
花も咲き始める。
足を進めただけ季節も進むよう。


ミネザクラ

ザックを下ろし、
昨晩作ったおにぎりを頬張りつつ今年最後の花見。


キヌガサソウ


オオバキスミレ


槍平で30分ほどお茶休憩をして、
写真を撮りながら、疲れた膝を休めながら、
散歩するように歩く。

花の香りが土のむっとした香りになり、
鳥の声が蝉の声に変わるころに長袖を脱いで衣替え。

下山してからやりたいことをあれこれ考えながら歩いていたら、
不意に目の前に人影が。
ひと月前に脳梗塞で集中治療室に入っていた父と、
7年前まで槍平で働いてくれていた山ちゃんが迎えに来てくれたのだ。

父の奇跡的な回復も嬉しいし、
静岡からたまたま父の見舞いに来てくれたという山ちゃんにも
約10年ぶりに会えて嬉しい。
ハイシーズン前の休暇、
心身のエネルギーをたくさん蓄えられそうです。

2014.6.23

今日は南岳でヘリ荷受けの仕事。

朝食を食べてからゆっくり準備して出発する予定だったけれど、
思ったより早くヘリが飛びそうだと連絡が入り急いで出発。
仕事を熱心に指導してくれる先輩のクニさんと、
南岳への道を急いだ。
クニさんはトレランもしているので、
途中引き離されながら必死の思いで後を追う。
中岳の下りはシリセードで。
平坦な道は駆け足で。
コースタイム3時間の道を50分ほどで急行した。

現場に着いて息を整えながら吹き流しを取り付けたり、
冬戸の小屋の玄関を開けたり荷受けが出来る準備をする。

準備中に夏毛のオコジョがひょっこりと現れて、
立ち上がってこちらの様子を見ていた。
作業がひと段落してカメラを持って近づこうとすると一目散に逃げて行った。
野暮なことをしちまった。

ヘリの荷受けはスムーズに終了。
30kgくらいずつ荷物を抱えて小屋まで20往復ほど、
午前のうちに荷物の搬入も完了!
残りの時間は冬戸を外したり、
小屋内の作業をして過ごした。


冬戸を外した厨房の窓の前にはまだ雪の塊がある

今日は南岳にお泊り。
ここに泊まるのはいつ以来だろうか。

休憩時間に長靴をはいて南岳山頂まで散歩する。
天気に恵まれて気持ちがいい。
少しだけ雪渓が残ってはいるものの、
稜線はほぼ夏道。


南岳山頂(3032m)から槍ヶ岳を望む


笠ヶ岳方面

季節の変わり目

春の息吹


夕方、無線の交信で獅子鼻の高台に登ると、
ちょうど日が傾き始めているところだった。
30分ほどでその場に佇んで日が沈むのをずっと眺めていた。



6:55無線交信前

もうすぐあそこと交信する

7:10、無線交信後

夕焼けに染まる大キレット〜北穂〜滝谷

夕日を眺めるクニさん
「こういうものが見れるから山はやめられねぇ」
僕もうんうんと頷く

双六、裏銀座方面


小屋の玄関前に戻って本日最後のシャッターをきった

日が深く沈んでくると稜線のシルエットが鮮明になり、
いよいよ沈むとふっと影が薄くなってむしろ明るく感じる。
遠くに広がる雲海が浮かび上がるように鮮明に見える。
一瞬の劇的な場面転換。

夕日を穏やかに眺められるのは幸せの証拠だと思う。

2014.6.22

週末はパッとしない天気に加えて、
体調もパッとしなかった。

重い物の運搬作業で負荷がかかったのか、
2本指懸垂が出来るようにとトレーニングしすぎたのか。
2・3日前から手根管症候群の症状が出ている。

加えて、
疲れとストレスで胃が荒れているのか、
昨日の食べ過ぎて胃もたれしているのか、
昼食のラーメンを食べていて急な吐き気に襲われたり。

バイオリズムの谷が通過している感じだ。
同僚のけんちゃんから胃薬を貰って、
気持ちの悪さを引きずりながら午後の作業をこなす。
大工さんの手伝いと、PCのメンテナンス。

夕食直前まで胃からこみ上げる不快感があったけれど、
食事が始まるとあっけなく食欲に染まり気分も回復。
食後、ふと外を見ると天気も回復していて、
久しぶりに夕焼けが見れた。





お客さん達と一緒に眺める


日が沈むと赤が深くなる。

明日は南岳まで行く仕事がある。
天気も体調もいい状態に恵まれますように!

2014.6.17

今日、田中陽希さんが槍ヶ岳を通過して行った。
田中さんは現在『日本百名山一筆書き』という企画に挑戦中。
2ヶ月前に屋久島を出発して、
陸上は徒歩で、海上はシーカヤックで、
すべて人力で百名山を続けて登るという内容だ。

NHKのアスリート取材陣と共に凄い勢いで槍沢を登って来て、
ゆったりと小屋でくつろぎ、
また颯爽と双六方面へ出発して行った。

一服中に外作業をしていた僕の所にやって来て、
「あの、目についたゴミを拾って来ました」
とポケットから一掴みゴミを出される。
トップアスリートの持つ爽やかさがまぶしかった。

『日本百名山一筆書き』HP
http://www.greattraverse.com


今日の10時のお茶は外で。
厨房長のブーさんが昨晩仕込んでくれたおはぎを食べて茶を一服。
スペシャルなお茶菓子に疲れも吹っ飛びました。

ごちそうさまでした。

2014.6.14

寒い朝、玄関を出るとベンチが凍っていた。
気温は1℃
風がかなり強いので体感は氷点下だ。



昨日の晩はみぞれ混じりの強風。
今日は土曜日。
ぐっと冷え込んでガスも濃いので、
「低体温症で動けなくなる人が出そうだな」
と先輩が呟いた一言が耳に残る。

それでも昼過ぎから天気が回復してきて、
久しぶりに周りの景色が見れた。
午後からは外作業もできた。

夕暮れ。空はクリアだが風が強い。

湧いてはうねるように形を変えていく雲に見え隠れする山は、
ここ数日で確実に雪解けが進んでいる。

2014.6.12

今日は朝から霧雨で視界不良。
外作業は諦めて、館内の掃除やワックスがけ、
布団の襟ふ縫いなどをした。

こんな日はお客様も来ないだろうと思っていたら、
昼過ぎにひとり登って来られた。
山慣れした雰囲気で落ち着いている。
悪天の中来られたけれど、危なっかしさは感じられなかった。

晩にストレッチをしようと談話室に入ると、
その方が雑誌を読んでいて1時間ほど話をした。
嘉門次小屋の小屋番さんで、
休暇で槍まで足を運んだとのこと。
以前は横尾山荘でも働いていたことがあるようで、
この辺りの山域はよく歩いているらしい。


嘉門次小屋のホームページより転載

僕は飛騨側入山が殆どで上高地にはあまり足を運んでいなかったので、
有名な嘉門次小屋の『イワナの塩焼き』を食べたことがない。
足を運んでみようと思っているのだけど、
タイミングが合わずに素通りしている次第。

「上高地で岩魚の塩焼きを出している所はたくさんあるけれど、
   ウチではあえて骨の柔らかい小ぶりなのを選んで使っている。
   それを40分かけて囲炉裏で焼いているから、
   骨がますます柔らかくなって頭から美味しく食べられるんだよ」

「従業員していると食べる機会も多いけど、
   何度食べても食べ飽きないね〜」

飾りっ気なくそんな話をするので、
夕食を腹いっぱい食べた後なのに食欲が湧いてきた。


嘉門次小屋のホームページより転載

今年中にはぜひ味わってみたいもんです。
上高地の散策も久しぶりにしてみたいなぁ。

嘉門次小屋
http://kamonjigoya.wordpress.com

2014.6.11

パッとしない天気が続いている。
休暇明けで入山してから1週間が経つのだけど、
雨の降らなかった日は無い。

今朝の空

最近の傾向として、
朝は下界を覆う雲と上空を覆う雲の間にいることが多く、
だんだんとその境目があやふやになり霧雨や雨が降り出すことが続いた。

襲雷警報機が一日中鳴りっぱなしだった日もあり、
外での作業がなかなか捗らない。
まだ雪かきする箇所も残っているし、
冬戸を外したい箇所もある。

実家が経営している槍平のほうも、
10日に入山して小屋明けを進めているとのこと。
槍平ニュース
http://blog.goo.ne.jp/yaridairagoya

夏山シーズンは遠いようで近い。
雨の中でもたくさんの登山客を迎えられるように準備しなくては。

今年のハイシーズンは厨房に入って『米汁』という、
ご飯とみそ汁を切らさずに提供する役割を任命される予定。
去年のピークは1日で100升炊いたとか。。
夏が楽しみでもあり、恐ろしくもある。

2014.6.8

今朝は富士山がくっきりと見えた。
雲海と高層の雲の間が澄み渡っていてとても素敵な景色が広がる。
朝の仕事がひと段落するや否や、
急いでカメラを抱えて外へ。
しかし、残念ながらガスが湧いてきていて写真映えのしない景色に。
少し早起きすればいい写真が撮れるのだろうけど、
6月の睡魔はなかなか手強くて布団に縛り付けられてしまうのである。


笠ヶ岳方面はガスが少なく堂々とした山容を見せてくれた。
雪がだいぶとけて、緑も分かりやすくなった。


昨日は襲雷警報機を設置。
これからの時期、雷雲の中に入ることもしばしばあるので、
感度の調整の仕方なども覚えて安全管理したい。


配線をつなげるのに苦労した。
電線を切って繋げるのは中学の時の『技術』の時間以来か。

最近は家事全般に大工仕事や電気整備などが加わって、
どれも半人前以下なので奮闘の毎日。
覚えることがたくさんあるのは楽しいことだけど、
なかなか整理が追いつかないので始末が悪い。
体力も回復してきたので、そろそろギアを上げていかないと!

2014.6.5

本日、休暇最終日。
今日中に槍ヶ岳山荘まで行きたいところだけど、天気が心配。
朝イチのバスに乗り上高地に着いた時には雨が降っていた。
新緑が雨で潤って柔らかく光っている。
澄んだ森の香りがさりげなく漂い、せせらぎの音も穏やか。
梅雨入り初期の森はやさしい。


雨に潤う森

本当なら飛騨側から入山する予定だったが、
父からも祖父からも同じアドバイスをもらい上高地入山することにする。
飛騨側の方が早くに山荘まで上がることが出来るが、
夏道が露出し始めるこの時期の道迷いのリスクや、
悪天時のエスケープを考えるとやはり上高地ルートか。

ヘリ番で上高地入りしている先輩スタッフに横尾の手前まで送ってもらい、
横尾を過ぎて登山道に入る頃には雨も小康状態になっていた。
10:00過ぎに槍沢ロッヂに到着。
お茶休憩に混ぜてもらって10:45ごろ出発。
雨は完全に止んでいる。


ババ平の上部は雪渓がとけて川が露出していた。
スノーブリッジに注意して右岸を歩いていく。

昼食のおにぎりを頬張ってから、
空に立ち込める濃いガスに向かって歩き出した。


ガスの中は視界10mもない。
目印の旗を越えて数歩すすまないと次の旗が見えない。

自分は今どのあたりを歩いているのか分からないのは、
気が滅入ってくる。
進んでいる実感を伴わないので疲労感もたまる。

まっすぐ歩いているつもりでも右にそれていたり、
見知っている道のはずなのに知らない場所に来ているような不安感にも駆られる。

そろそろだ、と何度目に思ったかは数えていないが、
想像してたよりずっと遠くまで来て急に大岩の影が霧の中に浮かんだ。
あと少しだと居場所の見当がついて、
急に力が湧いてくる。

ザックを下ろし岩にもたせかけてひと休憩していると、
大岩の上にひょっこりと雷鳥が顔を出した。


大岩の上にいたつがいの雷鳥。
僕の様子を見に近くまで寄って来た。

少し元気を取り戻したのか最後の急斜面は一気に登りきる。
15:00すこし前に山荘到着。
今回は荷物の重かった前回よりも疲れた感じだ。


気温は3℃
下界との温度差は30℃、体調を整えて明日からまた頑張ろう。

2014.6.4

飛騨地区は巷よりひと月遅く季節の行事がある。
ひな祭りは4月3日だし、七夕は8月7日。
月遅れの文化が根付いていて明日が端午の節句となる。

本当は今日が休暇の最終日で、
朝イチで入山して槍ヶ岳山荘まで上がっている予定だったのだけど
無理言って休みを1日延ばしてもらった。

父に脳梗塞の発作があり28日から入院していて、
本日手術を受けるので付き添いをしてきた。
リスクのある手術だったけれど、結果は大成功。
担当医師の予想を超える順調っぷり。
後遺症も殆ど残らない状態にひと安心です。

今朝は出かける準備でバタバタと忙しくしていたけれど、
母から
「長靴と鎌を用意しといたから、菖蒲を一掴みほど刈り取ってきて」と指令が。
慌ただしい中でも行事ごとを大事にするんだな、と
半分あきれて半分感心してミッションをこなす。
母に依頼の品を渡すと満足した表情で、
どこかから摘んできた蓬と括って神棚や仏壇に供えていた。
以前より行事ごとに熱心になっている気がするのは気のせいだろうか?

父のことがひと段落して、
ホッとして家に帰ってくると祖父が菖蒲の飾り付けをすすめていた。

家中の至る所にこれが飾られていた。
昔からやってたっけ?

『前日に準備するのがセオリー』
『菖蒲と蓬を束ねたのを屋根の上に投げると台風の被害にあわない』
急に魔術的な言動を再開し始めた母に気圧されながら、
草束を屋根の上に放り投げる追加ミッションをこなした。

家ってこんなに行事に熱心だったっけ?

そう尋ねると「これでもやらない事が増えて簡略化した」とのこと。
『蛇が住み着かないようにちまきの蒸し汁を家の周りにまく』など
失われた作業の話も聞いた。
 
迷信じみて非合理的な行動だけれど、
昔の人は予想のつかない自然現象と
こういう行為を通して折り合いをつけてたんだなと感じいるところもあった。

今日の最後の指令は
『湯船に菖蒲を浮かべてあるから、それで体を払いなさい。無病息災祈願よ』
何やってるんだか、、
と思いながら湯船で菖蒲の束を握って体中パチパチと叩いた。
無為な行いだと一笑することもできるけれど、
なんとも人間味があって面白い風習だと思う。

ミッション・コンプリート。
休暇明けを穏やかな気持ちで迎えられて良かった。

2014.5.30

今日から休暇。
前回から10日しか経っていないけれど、
6月の休暇は早めにとらせて頂いた。
そのぶん、次回はひと月以上山に篭ることになる。

5:00に出発の予定で4:00に起床。
昨日作っておいたおにぎりを食べて準備を進めていると、
空が白んできて窓の外が明るくなってきた。
外を見やると美しい朝焼けが!


準備の手を止めて玄関前に写真を撮りに行く。


南方の雲が淡い桃色に染まる


朝日を受ける大喰岳
雪渓が日焼けしている。
頂上に人がいる。
あの位置から穂先と朝日を眺めたらまた格別だろうな〜
なんて思いながら後ろ髪引かれつつ準備に戻る。

5:15、朝焼けに見とれていたぶん遅くなって出発。
小屋前でアイゼンをつけたけれど、
飛騨乗越までは雪が溶けてほぼ夏道。
飛騨沢の雪渓に入るまで一旦アイゼンを脱ぐかどうか迷ったけれど、
付け外しも面倒臭いので石や岩をがりがりと踏んで歩いた。

雪渓の表面はガチガチに凍っていて、
ちょうど僕の体重を支えられるかどうかのクラスト。
踏み抜くと中はグサグサで足をとられやすい。
ペースを上げて一気に下るつもりだったけれど、
転びたくないので抑え気味に歩く。

雪渓の中は所々岩が露出してきている。
ここ数日で一気に雪解けがすすんだ。
6月の雨に打たれて一気に溶けると聞いているので、
その変化もまた楽しみだ。
緩斜面から急斜面になる所に深さ30cmくらいのクラックが走っていて、
状況を観察してから視線を下に送る。

ん?
目に飛び込んできた異変に心がざわつく。
まだ遠くで分からないけれど、人が倒れている?

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ここから先は読んで不快になる方もいると思います。
重い内容になるので、
気晴らしにこの日記を読まれている方は読み飛ばした方が良いかもしれません。
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約150m先に何かが見える。
稜線からは500mくらいか。
左を見やるとその何かに向かって、
墨の切れかけた筆で引かれたような赤いラインが真っ直ぐ伸びている。

人が倒れているにはあまりにも静かで、
遠くにある物も小さく見える。
『クマが山を越える時に足を滑らせて転げたんじゃないか』
『人が滑落したけれど、荷物を残して何処かで休憩しているんじゃないか』
現実を受け入れる前の防衛反応だろう。
どう考えてもあり得ない仮説を頭に浮かべながら、
足早に急斜面を下る。

一歩ごとに現実が近づく。
雪面に見える青い点は3つ。
真ん中が少し大きくて、
前後に小さい点がある。

近い方の点に追いついてみると、
青いスパッツのついた登山靴。
ここで、この先に人が倒れていることが確信に変わる。

5:35斜面も緩んできたので駆け寄りながら声をかける。
反応はなし。

上半身が捻れて伏せているので回り込んで近くによる。
顔の損傷は酷く、血にまみれている。
左手首と右膝から先はありえないねじれ方をしている。
今朝、大喰岳の頂上にいた人だと思われる。

すぐに山荘に連絡。
そして、すぐにバイタルサインの確認。
脈なし。呼吸なし。
手首は冷えているが、体幹は暖かい。

不安定な首を庇いながら
体を仰向けにして心臓マッサージ開始。
セットが終わるごとに少し手を止めて頸動脈が触れないかを探る。

先輩が増援に駆けつけてくれるまでの30分、
ずっと心臓マッサージを続けていた。
ずっと続けていたので、体の熱が奪われていくのも分かった。

ヘリが来るのに2時間ほどかかるとのこと。
雪面にマーキングしてヘリを迎える準備を整えて、
先輩に現場を任せて場を離れる。


体験が大きくてまだ消化しきれないけれど、
こういう状況に立ち会うことの重みをしっかり受け止める必要がある。
休暇明けにはよりしっかりした足取りで山に戻れるように。