2015.2.24

「今朝はあったかいね」
みんな起きてくるなり朝の挨拶の代わりに言う。
今朝は−3℃、かなり寒さが緩んだ。

今週末にアイスクライミングのコンペがあるので、
キャンディ担当のスタッフは
気温が上がり過ぎて氷が溶けないか心配でたまらない様子。
昔、コンペ前に雨に降られて
アイスキャンディはの大きさが10分の1になったこともあるとの事。
「寒すぎるのは嫌だけど」と言いながら
寒波乞いをしていた。

僕は病み上がりで久しぶりの外作業。
たまに咳が出るので本調子でないのだろうけど、
いままで体を動かせなかったぶんいつもよりヤル気で出発。
今日のミッションは行者小屋の屋根の上の雪かきだ。

朝は日が差していて、
「今日は日焼けしそうだなぁ」
「暑そうだからTシャツ持って行こうか」
なんて言い合って出発したのだけど、
みるみる雲が出てきて気温も下がる。

作業中は寒さは気にならないのだけど、
昼休憩はダルマストーブを囲んで暖をとる。
休憩はしたいけれど休憩が長くなるぶんツライという状況につき、
早々に作業を再開。
倉庫の屋根を掘り起こし、
発電室の屋根の雪を落として発電室を埋め、
1m以上の雪をかき分けてソーラーパネルを発掘した。


掘り起こしたソーラーパネル群

この屋根の雪かきをするのは今シーズン4回目。
作業を終えて周りを見やると、
昨晩の風雪で白くなった岸壁の格好よさに疲れも和らぐ。
「いい景色だねぇ」
一緒に作業したNさんとしばらく屋根の上で景色を眺めて一息ついた。

2015.2.23

先々週は休暇で東京に遊びに行って、
ジムに行ったり美味しいものを食べてリフレッシュ。

ジムは秋葉原のパンプに行ったのだけど、
3級を数本落とせたのが嬉しかった。
クライミングの感覚は鈍っているけれど、
肉体労働が多いぶんパワーはついているように感じた。
久しぶりのクライミングが楽しすぎて、
6時間ほど夢中で登る。
閉店までいる予定だったけど
最後は完全なガス欠。
休憩していたソファに沈んでうとうとと舟を漕ぎ始めたので、
切り上げて帰ることにした。
動けると言ってもブランクがある中で、
全盛期の頃の感じでやるにはむりがあるようだ。

過去の自分といまの自分のコンディションの違いを
うまく捉えていくことは難しい。
筋疲労の倦怠感が5日ほど尾を引くなか、
つくづくそう思った。


平日の17時を過ぎて賑わってくるジム。
『ジムに通う』って幸せなことやなぁとしみじみ。


美味しいものもたらふく食べて、
減った体重を元に戻しての休暇戻り。
山では強い寒気が出迎えてくれて、
下界にいた翌日には室温−16℃になっていた行者小屋の週末営業。
緩んだ心と体ではこの寒さに堪えられず、
先週は風邪をひいて調子がいまひとつだった。

富士山の小屋の若旦那達が鉱泉に視察にきて、
一緒にキャンディをやり晩まで語らったこと。
槍の小屋番の先輩と同僚が遊びに来てくれたこと。
平日なのに50名近くのお客さんが続いて忙しかったこと。
日記にしたいことはたくさんあったのだけど、
体が眠りを欲していたのか休憩時間は泥のように寝て過ごしていた。

酒焼けが慢性化した人のようなハスキーボイスになり、
喉の痛みが続いたけれど体は元気!
そう周りにも公言していたのだけど、
ほんとうに回復してくると体が軽くなったように力が出てきて
やっぱりしんどかったんだなと思う。
こじらせずに順調に回復してよかった。

今週は水・木に歩荷、
週末は鉱泉のイベント『アイスキャンディカップ』がある。
今日は調子が良いのだけど、
念のため今晩まで風邪薬を飲んでおこう。

2015.2.5

今日は槍の同僚けんちゃんと
昨シーズンにアルバイトをしてくれた
Sさん、Oさん、Mくんが鉱泉へ遊びに来た。

本日の仕事は行者小屋に行って雪かき。
作業が大体ひと段落して屋根から降りると、
足を運んでくれたみんなとばったり再会。
懐かしい顔が見られるのは、
なんとも嬉しいもんですね。

鉱泉に戻った時は16時くらい。
内メシまで休憩して良いと言われたので、
みんなでキャンディをやろう!という話になった。
みんなアイスクライミング初体験だったけど、
なかなか上手く登っていた。


しっかりビレイしてお接待

天気がいまひとつでも、
赤岳鉱泉にはアイスキャンディがある!
登りきったとこでみんなポーズをとって撮影したり、
楽しそうにしてくれているのがまた嬉しい。

今日はお客さんも少なめ。
晩も余裕がありゆっくりと話をすることが出来てよかった。


久しぶりの再会につもる話が弾む。

2015.2.4

今日は大学からの友人のAちゃんが
山岳会の仲間と日帰りアイスで遊びに来た。

学生時代はお互い文化系よりで
スキーやスノボに行く友人たちを見て
「コタツでみかんの方が冬を楽しめる!」
なんて言い合い頷きあう間柄だったから
冬の八ヶ岳で一緒にアイスクライミングをする日が来ると
誰が想像出来ただろうか。


Aちゃんはアイス初体験
フッキングで器用に登っていた。

「昨日、治水工事頑張ってもらったから」
と、支配人さんの計らいで休憩時間を多めに頂いたので、
僕も仲間に入れてもらって遊んだ。

前からやってみたかったハングのライン

トップロープだし、
いちばん被っているところに突っ込んだ。

ハングの下では思うようにアックスが振れなかったり、
ハングを超える時の足が決まらなかったり。
自分が安定して登れる能力以上のラインにトライする感覚を
久しぶりに味わった。

クライミングへのモチベーションが上がる。
やっぱり攀じるのは、たのしい。

2015.2.3

水力発電の調子が悪いため、
若旦那とKさんと発電システムのメンテナンスに行くことになった。
モンベルのウェーダーを履いて川に浸かり、
取水口の上流の流れを確認しつつ流れをスムーズにするための工事をする。
真冬の治水工事。

電力がうまく供給出来なければ、
−10℃を超える環境では水道のインフラも維持できなくなる。
こういう外作業をしていると、
冬季営業の裏側にある苦労が身にしみる。

工事に行くときは空のプロパンボンベをひとり2本担ぎ下ろした。


夕方まで作業をして、
『雪の重みで川の石がずれて流れが変わっていた』
ことが原因だと突き止め
日が暮れる前に復旧に成功!
手足の先の感覚が無くなるまで冷え切って
寒さとの厳しい戦いの作業だっただけに
問題を解決した達成感がたまらなかった。


鉱泉に帰るとキャンディ作りの放水ホースがモンスターになっているのを発見。

口から水を吹き出すモンスター

キャンディ職人のキヨさんは、
寒波が来ると夜中も2時間おきに起きてこういうモンスターと戦って
キャンディのメンテナンスをするのだそう。
時に風に吹かれた水に濡れて氷の鎧を纏うことになるのだとか。

2015.2.1

忙しい週末だった。

赤岳鉱泉でアイスキャンディフェスティバルというイベントが行われ、
行者小屋にも50名以上のお客さんが宿泊された。
ふたりで運営しているので、
売店をしながらフロント業務を行い、
夕食のテーブルセットをしつつ料理の盛り付けもする。
というマルチタスクがなかなか大変だった。

今日も早起きしてお客さんの朝食を用意してからの、
ひとり全館掃除。
大部屋の布団が結露して、
床との接地面が凍りついているため
ストーブのわきに持っていて乾燥させるのに手間がかかる。
2階の大部屋の床から引き離した布団を2・3枚抱えて、
1階の食堂にあるストーブで乾かし、
頃合いを見計らってまた2階に運んでたたむという作業を繰り返すうちに
時間があっという間に過ぎていく。

支配人のKさんは組んできた水で溜まった洗い物を進めるけれど、
お客さんからの「すみませ〜ん!」との呼び出しの集中砲火を受けて作業が難航。

全館掃除と小屋閉め作業が終わったのは16時をまわっていた。
夕日を浴びながら鉱泉に戻る。
オレンジ色の木漏れ日と、黄金色の峰が
1日の終わりを演出してくれて良い雰囲気だった。

太陽が西に傾くほど空気は冷えていく。


鉱泉の玄関脇にあったタバコの吸い殻。

鉱泉は祭りの後の静けさに包まれていた。