2014.6.4

飛騨地区は巷よりひと月遅く季節の行事がある。
ひな祭りは4月3日だし、七夕は8月7日。
月遅れの文化が根付いていて明日が端午の節句となる。

本当は今日が休暇の最終日で、
朝イチで入山して槍ヶ岳山荘まで上がっている予定だったのだけど
無理言って休みを1日延ばしてもらった。

父に脳梗塞の発作があり28日から入院していて、
本日手術を受けるので付き添いをしてきた。
リスクのある手術だったけれど、結果は大成功。
担当医師の予想を超える順調っぷり。
後遺症も殆ど残らない状態にひと安心です。

今朝は出かける準備でバタバタと忙しくしていたけれど、
母から
「長靴と鎌を用意しといたから、菖蒲を一掴みほど刈り取ってきて」と指令が。
慌ただしい中でも行事ごとを大事にするんだな、と
半分あきれて半分感心してミッションをこなす。
母に依頼の品を渡すと満足した表情で、
どこかから摘んできた蓬と括って神棚や仏壇に供えていた。
以前より行事ごとに熱心になっている気がするのは気のせいだろうか?

父のことがひと段落して、
ホッとして家に帰ってくると祖父が菖蒲の飾り付けをすすめていた。

家中の至る所にこれが飾られていた。
昔からやってたっけ?

『前日に準備するのがセオリー』
『菖蒲と蓬を束ねたのを屋根の上に投げると台風の被害にあわない』
急に魔術的な言動を再開し始めた母に気圧されながら、
草束を屋根の上に放り投げる追加ミッションをこなした。

家ってこんなに行事に熱心だったっけ?

そう尋ねると「これでもやらない事が増えて簡略化した」とのこと。
『蛇が住み着かないようにちまきの蒸し汁を家の周りにまく』など
失われた作業の話も聞いた。
 
迷信じみて非合理的な行動だけれど、
昔の人は予想のつかない自然現象と
こういう行為を通して折り合いをつけてたんだなと感じいるところもあった。

今日の最後の指令は
『湯船に菖蒲を浮かべてあるから、それで体を払いなさい。無病息災祈願よ』
何やってるんだか、、
と思いながら湯船で菖蒲の束を握って体中パチパチと叩いた。
無為な行いだと一笑することもできるけれど、
なんとも人間味があって面白い風習だと思う。

ミッション・コンプリート。
休暇明けを穏やかな気持ちで迎えられて良かった。